こんにちは!
さて、依然として、「市場の価格変動性(ボラティリティ)」が高い状況が続いていますが、このような時に、ある程度資金がある方に対し、証券会社が勧める商品に、「仕組み債」というものがあります。
当社にも、「このような金融商品を勧められているのですが、どうでしょうか!?」といったお問い合わせが時折あります。
パンフレットだけ読むと、この低金利の中、魅力的な金利条件が提示され、興味を持たれる方も、多いようです。
ただ、今のような状況下で、リスクなく、そのような好条件を得ることはあり得ません。言うまでもなく、その“仕組み”をよく理解したうえで、投資する必要があります。
先般、日本証券業協会や金融庁からも、この「仕組み債」に対して、より詳細な情報開示を求める動きがありました。
そこで今回は、2回にわたり、仕組み債の“仕組み”とその“問題点(リスク)”について、考えてみたいと思います。
私が仕組み債の存在を知ったのは、20年も前のことです。
大手証券会社から、「仕組み債」の提案を受けた方が、そのセカンドオピニオンとしてご相談に来られた時でした。
その時に提案を受けていた仕組み債は、「デュアル・カレンシー債」というものでした。「デュアル・カレンシー債」とは、金利の違う通貨を組み合わせて元金の払込、利払い、償還金に対して、使いわけを行う債券のことです。
当時、日本人向けに組成されていたデュアル・カレンシー債には、
払込み | 円建 |
利払い | 円建 |
償還 | 外貨建 |
といったものがありました。
ただ、この場合、金利に対して為替リスクはありませんが、元本は為替リスクを負うことになります。
そこで、この元本の為替リスクを取りたくないという投資家の為に、為替リスクを利払い部分にだけ限定した「リバース・デュアル・カレンシー債」というものも販売されました。
払込み | 円建 |
利払い | 外貨建 |
償還 | 円建 |
この場合には、利払い部分だけ為替リスクがありますが、満期まで保有すれば、発行体の債務不履行がない限り、元本割れはないということになります。
ただ、投資の世界では、元本及び利払いに対しても、為替リスクを取りたくないという方も当然出てきます。
そこでそのようなニーズを受けて登場したのが、「ユーロ円コーラブル債」です。
払込み | 円建 |
利払い | 円建 |
償還 | 円建 |
運用通貨 | 金利の高い外貨 |
運用のみ金利の高い通貨(当時は豪ドルが主流)を用い、払込、利払い、償還は全て円建てになっています。発行体は、ほとんどがユーロ圏のAA程度の格付けを持った金融機関で、金利は初年度4-6%程度といった内容でした。
発行体 | ユーロ圏AA程度の格付けを持った金融機関 |
金利 | 初年度4-6%程度、 次年度以降は初年度金利を基準に為替によって変動 |
償還期間 | 20-30年 |
このように観てくると、すべて円建で為替リスクもないことから、投資家にとっては、大変魅力的な債券に見えますが、コーラブル債とは、“償還期限前に発行体が償還できる権利のついた債券”の事を言います。
つまり、30年の償還期間であっても、円安などが進み、債券の維持よりも有利な運用環境になったと発行体(金融機関)が判断した場合に、一方的に償還を早められるオプションを金融機関側が持っている債券なのです。
実際、4、5年で償還されるケースが多かったと記憶しています。そして、早期に償還される理由の一つが、組成の都度、組成金融機関や販売金融機関に手数料が入ることが挙げられます。
従って、金融機関にとっては、いわゆる「回転売買」によって、利益を得ることのできる金融商品と言えます。
一方、急激に円高が進行したような場合には、契約条項によって、金利がほとんどなくなり、償還も本当に30年待たなければ、元本が返ってこないケースもあります。
この複雑な仕組みをきちんと理解して、投資している個人投資家はごくごく少数と思われます。債券という名称にはなっていますが、かなりリスクが高い金融商品と言えるのです。
では、次回は、「仕組み債の問題点(リスク)」について考えてみましょう。