こんにちは!
さて今回は、このほど、英国の運用会社LCHインベストメンツが、世界のヘッジファンドの運用成績のランキングを公表したので、ご紹介したいと思います。
それによれば、創業から2023年末までの投資利益の累計で、1位がアメリカのシタデル、2位がミレニアム・マネジメントとDEショーといった“マルチ戦略”の有力ファンドが上位を占めました。
2021年から23年の3年間で、ヘッジファンド業界全体の投資利益の38%を、この3社で稼ぎ出した計算です。
大型ファンドの多額の報酬が、優秀なファンドマネージャーをひきつけ、高パフォーマンスを上げる好循環となっています。
また最近では、人工知能(AI)を活用した戦略も一般的となってきており、それら大型設備を整えた有力ヘッジファンド会社に、人材が集中しているといえそうです。
特に、マルチ戦略型の成績が好調な背景として、2022年から23年春にかけての市場環境が影響しました。
マルチ戦略とは、顧客から集めた資金を、運用戦略の違う複数のファンドマネージャーに配分して運用を行います。
2022年は、株式と債券の同時安が、28年ぶりに発生しました。
そのような状況下、多数の運用チームを有する大型マルチ戦略ファンドが、そこで集中的に実績を残し、中小の運用会社との明暗が分かれたようです。
それを裏付けるように、2023年のヘッジファンドの新規設定数は972本と、前年比で半減となりました。
中でも、減少が顕著だったのが、今まで好調を維持してきた「株式戦略型」でした。
2023年の設定は204本で、この10年で最多だった2015年に比べ、その本数は8割減となっています。2022年の株式市場の大幅下落によって、成績が悪化したことが、資金離れにもつながった模様です。
また、2023年10月には、米証券取引委員会(SEC)が、“空売り”に関する報告を義務付ける規制を取り入れました。
月間平均の空売りポジションが、平均1000万ドル以上、もしくは発行済み株式の2.5%以上の機関投資家は、翌月までに報告書を提出しなければならなくなったのです。
これにより、事務コストや管理リスクの負担が増すこととなり、小規模な株式戦略型のヘッジファンドには逆風となっています。
今後も、ヘッジファンド業界の寡占化が進むのかどうか、運用実績と共に、しっかりと注視していきたいと思います。