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さて、前回、「SPAC(特別買収目的会社)」について取り上げましたが、SPACの登場によって、世界のM&A市場は、急拡大しています。
金融情報会社リフィニティブによれば、2021年1-3月の世界のM&A金額は、1兆3000億ドル(約143兆円)を超え、前年同期比でほぼ倍増しました。
最大の市場は米国で、70兆円強となっており、前年同期2.5倍となっています。
大手企業による事業再編や、成長期待が高いハイテク企業においても、大型M&Aが相次いでいます。
また、金融緩和であふれるマネーを背景に、投資ファンドも活発に動いています。
アメリカの大手投資ファンドであるアポロ・グローバル・マネジメントは、保険会社アテネ・ホールディングの買収を発表し、株式交換による買収額は、1兆2000億円と、ファンド案件では今年最大となっています。
また、上述したSPACによる企業買収は、世界で25兆円に達し、こちらは前年同期比、約30倍です。
その結果、米国市場におけるM&Aの1/4は、SPAC関連が占めるまでに至っています。
この加熱するM&A市場において、懸念されているのが、M&A価格の高騰です。
割高な買収案件が増加することにより、買収先の経営状態が悪化した場合、損失が拡大することになるからです。
買収金額を何年で回収できるかを図る「EV/EBITDA倍率」も、長くなる傾向となっています。
一般的には、10年前後が一つの目安ですが、最近では15-20年、長いものでは30年近い案件も出始めています。
市場経済においては、M&Aによる事業再編は必要なことではありますが、金余りを背景としたSPACの利用拡大や、高騰する買収金額は、大きなリスク要因ともなっています。
このような状況の中、米証券取引員会(SEC)も動き出しました。
“SPACの監視強化”に、舵を切ったのです。
その影響から、4月に入ってからの新規株式公開は13件と、急ブレーキがかかっています。
SECは、近年、上場企業の減少を受けて、IPO活性化に取り組んできたため、今までは、SPAC利用の拡大を黙認してきました。
ただ、上述の通り、問題が顕在化してきたことにより、“投資家保護”を強く打ち出してきた格好です。
SPACは、「IPOのイノベーション」となるのか、「SPACバブル」で終わるのか、引き続き、今年のM&A市場からは、目が離せない状況が続きそうです。