こんにちは!
さて、前回取り上げた5年に一度の「財政検証の結果」が、この度公表されました。
財政検証は、私たちが加入する国民年金、厚生年金のいわゆる公的年金が、長期的に給付や財政が持続可能かを確認する「定期健診」の位置づけとなっています。
その中でも、最も重要な指標が、「所得代替率」です。
モデルケースでは、夫が厚生年金に加入し、妻が専業主婦の世帯を想定し、65歳時点で、夫の現役世代の手取り収入額の何%の公的年金がもらえるかを試算します。
そして、政府は、これが50%を下回らないように制度設計を目指しています。
今回の結果は、総論としては、前回に比べ改善されたとしています。
その要因としては、2つあります。
一つ目は、高齢者や女性の労働参加が進んだこと。
そして二つ目は、年金運用が好調で、積立金が想定より70兆円増加したこと。
が挙げられています。
一見、「良かった」とホッとしたいところですが、その中身を観ると、手放しに喜んでばかりもいられません。
厚労省は、今回“4つの経済シナリオ”で試算を行いました。
(シナリオ) | (実質経済成長率) |
高成長ケース | 1.6% |
成長ケース | 1.1% |
横ばいケース | -0.1% |
マイナス成長ケース | -0.7% |
上記の通り、高成長ケースから、マイナス成長ケースまで、それぞれの試算が行われました。
では、このシナリオで、所得代替率はどのように変わるのでしょうか。
ちなみに、2024年度、現在の所得代替率は、“61.2%”となっています。
以下、ご覧ください。
(シナリオ) | (所得代替率) |
高成長ケース | 56.9% |
成長ケース | 57.6% |
横ばいケース | 50.4% |
マイナス成長ケース | 33-37% |
いかがでしょうか!?
全てのケースで、今年の所得代替率を下回る結果となっています。
また、それぞれのシナリオには前提条件がありますが、例えば成長ケースの場合、60代の就業率が2040年に77%(2022年は62%)、出生率1.36(2023年は1.20)、実質賃金上昇率1.5%(2001年~2022年の平均は、-0.3%)と、多くの数値が改善されないと達成が難しい試算となっています。
現状の横ばいシナリオでいければ、何とか所得代替率は50%を維持できますが、マイナス成長ケースになった場合は、2059年に積立金が枯渇し、年金制度が破綻するといった試算もされているのです。
前回もお伝えしましたが、やはり政府によるシナリオの前提は、相対的に「甘い」というのが、私の実感です。
もちろん、何とか公的年金制度は維持してもらいたいと思いますが、“甘い想定”に自分自身の生活設計を賭けるわけにもいきません。
やはり、一番確実なのは、自分自身で「資産形成」に取り組むことしかないようです。
現在、マーケットは、色々な諸問題を抱えながらも、上昇基調で推移しています。
このままだと、「資産形成」に取り組んでいる人と、取り組んでいない人の“資産格差”はますます拡大することとなります。
今の上昇局面は、いずれどこかで調整が来ることは間違いありませんが、目先の下落を恐れ、取り組まない事の方が、中長期的に観れば、より“生活へのリスク”は高いと言っても過言ではありません。
まずは、中長期的視点であるご自身のライフプラン、人生設計を前提に、しっかりとした運用プランを確立し、臨んでいくしか方法は無いと思います。
ご相談は、随時受け付けています。