こんにちは!
さて今回は、テレビのCM等で、日本の大手証券会社がこぞって宣伝をしている「ファンドラップ」の実績について、検証してみたいと思います。
1. ファンドラップとは!?
ファンドラップとは、投資信託などの複数のファンドを組み合わせて資産運用を行うサービスで、投資家と金融機関が投資一任契約を結び、専門家が運用や管理を行うのが特徴です。
Googleの生成AIによって、メリットとデメリットを検索したところ、以下のような回答が返ってきました。
ファンドラップのメリットには、次のようなものが考えられます。
・投資初心者でも資産運用を専門家に任せられる
・分散効果が高く、リスクを低減できる
・手間暇をかけずに資産運用ができる
・資産管理機能が充実している
なるほど!
一方、ファンドラップのデメリットとしては、以下のような回答がありました。
(1)運用コストが高い
ファンドラップには、口座管理手数料や信託報酬などの手数料がかかります。手数料は金融機関によって異なりますが、年率1~3%程度です。運用状況によっては手数料の方が高くなる場合もあります。
(2)公開されている情報が少ない
ファンドラップは投資家と金融機関の一任契約であるため、運用成績の開示を行う義務がありません。運用実績などの情報を得にくいデメリットがあります。
(3)NISAを活用できない場合がある
ファンドラップにおける投資では、多くの場合NISAを活用することができないので、非課税メリットを得られない場合があります。
こちらもなるほど!!
特に、コスト高である点と、NISA口座を活用できない点などが、個人的には気になるところです。
2. 日本の大手ファンドラップの実績
さて、AIの回答でポイントは分かりましたが、では、実際の“実績”はどうなっているのでしょうか!?
様々な調査を行ったところ、金融庁のHPから有益な情報を見つけることができました。
https://www.fsa.go.jp/common/about/research/20230421.html
「2022年末(4)ファンドラップ関連」の中の「(4-c)ファンドラップ(SMAを含む)の「費用控除後」平均パフォーマンス」という資料を観ると、各ファンドラップの平均リターン、コスト、コスト控除後のリターン、リスク(標準偏差・ブレ幅)などが掲載されていました。
ちなみに、この資料は、2023年4月21日付の金融庁の資料で、2022年末の時点の各社の実績を分析しているものです。
ラップを運用している各社の情報が掲載されていますが、残高で観ると、圧倒的に大きいのが、やはり大手証券会社3社です。
トップが、ダイワファンドラップで2兆7305億円の残高でした。続いて、日興ファンドラップが1兆8974億円、そして野村ファンドラップが1兆6195億円などとなっています。
また、ラップに組み入れられているファンドの数は、ダイワが29本、日興が10本、野村が21本でした。
では、最も気になるリターンですが、過去5年の年率は以下のようになっています。
大和 | 3.4% |
日興 | 2.4% |
野村 | 2.1% |
いかがでしょうか!?
ただこの数値は、信託報酬やラップコストなどを控除する前の数値です。
上記でも指摘されているように、ファンドラップは、各ファンド(投信)の信託報酬以外に、ラップコストがかかっているため、コストは高めとなっています。
では、各社の年間費用(コスト)は、一体どのくらいなのでしょうか。
資料によると、以下のようになっています。
大和 | 1.54% |
日興 | 1.32% |
野村 | 1.1605% |
従って、投資家にとって一番関心事である“費用控除後の正味リターン”は、以下のようになります。
大和 | 1.8% |
日興 | 1.1% |
野村 | 0.9% |
いかがでしょうか!?
「・・・・・」
上記を一覧にしたのが次の表です。
証券大手3社のファンドラップの実績(2022年度末時点)
ラップ口座 | 本数 | 過去5年リターン | 年間費用% | 正味リターン | リスク(ブレ幅) |
※費用控除前 | ※費用控除後 | ||||
ダイワファンドラップ | 29 | 3.4% | 1.54% | 1.8% | 8.20% |
日興ファンドラップ | 10 | 2.4% | 1.32% | 1.1% | 8.60% |
野村ファンドラップ | 21 | 2.1% | 1.16% | 0.9% | 7.60% |
正味リターンもさることながら、リスクであるブレ幅を8%前後まで取っている割には、リターンが低すぎるというのが、私の率直な感想です。
私自身、自分の資金を運用している個人投資家の立場では、正直、魅力的な金融商品とは映らないのが本音です。
ファンドラップの“コンセプト”は、良いとは思いますが、収益と費用という“実態”に関しては、やはりしっかりと検証する必要があるのではないかと、改めて感じました。
以上ご参考としてください。
なお、次回は、当社が運用する国内の「ポートフォリオ・マネジメント・サービス®(PMS)」の各モデルプランの2024年の実績が確定したので、検証してみたいと思います。