こんにちは!
さて、皆さんの中には、企業にお勤めで、「企業年金」に加入されている方も多いかと思います。
そこで、今シリーズでは、日本の企業年金の現状について、取り上げてみたいと思います。
第1回のテーマは、「積立不足」です。
上場企業の退職給付債務から年金資産を差し引いたいわゆる「積み立て不足」の額が、今年3月末の時点で、16兆7446億円と、前年同月比で約7000億円増加しました。
これで、悪化は2年連続です。
3月決算の上場企業1947社の退職給付債務の合計額は、60兆296億円となっています。
「確定給付型年金(DB)」から、「確定拠出型年金(DC)」に移行した企業もあるため、金額ベースでは3%減少しましたが、債務が増えた企業は全体の53%となっています。
一方、年金資産は6%減少し、43兆2850億円のため、16兆円強の積み立て不足となっているのです。
最大の要因は、長引く「低金利」です。
確定給付年金は、運用利回りを約束しているため、受給する社員にとってはありがたい制度ですが、負担する企業にとっては、利回りの低下分を、企業の利益から補填しなければなりません。
そのため、将来払うべき年金に対して、何%で運用できるかによって、準備しておく資金が違ってきます。
これを「割引率」と呼んでいます。
10年ほど前は、2%を超えていましたが、現在は平均で0.78%となっています。
割引率が低下することによって、割引率の低下 → 積み立て不足→ 企業債務の増加 → 企業業績に悪影響といった構図となります。
もともと年金運用は、価格変動リスクを極力避ける傾向があるため、今般の株式市場の上昇の恩恵は、ほとんど受けることができていません。
このような状況下、特に財務状況が厳しい企業ほど、すでに、利回りを保証しない「確定拠出型年金」への移行を行っていますが、比較的体力のある優良企業も、今後、年金制度をどうするのか、選択を迫られることとなりそうです。
さて、次回は、この「積立不足」に対応する手段として、「リスク対応掛け金」について、取り上げたいと思います。