拡大する“ベーシス取引” Ifa Japan

拡大する“ベーシス取引”

こんにちは!

さて、最近のヘッジファンドの動向です。
ここにきて取引が拡大しているのが、「ベーシス取引」です。
「ベーシス取引」とは、国債の投資戦略の一つで、現物と先物との価格差(ベーシス)に着目した裁定取引のことです。

一般的には、割安な現物の国債を買って、割高な先物を売り持ちしたうえで、価格差が収れんしたところで、反対売買を行い、利益を狙う手法です。

ヘッジファンド戦略の中でも、相対的にリスクが低く、得られる利益も大きくはありません。そのため、通常は、投資効率を高めるために、買い持ちしている債券を担保に借り入れを行い、取引額を膨らませる、いわゆる“レバレッジ”をかけて収益の最大化を目指します。

米国のミレニアム・キャピタル、シタデル、LMRパートナーズといった運用会社が当戦略の大手ですが、日本人創業の英国最大級のヘッジファンドであるキャプラ・インベストメント・ジャパンも約4兆円規模の運用を行っています。

米商品先物取引委員会(CFTC)のデータを基に、国際決済銀行(BIS)が、9月上旬時点のヘッジファンドをはじめとする投機筋による米国債先物の売越額を算出したところ、5649億ドル(約84兆円)と過去最大規模に膨らんでいることがわかりました。

先物の証拠金と投資額から試算したレバレッジの水準は、50-70倍とみられており、かなりの高水準となっています。

同戦略拡大の要因は、米国市場の「ゆがみ」です。
通常は、現物と先物価格は連動しますが、インフレに伴う大幅な金利上昇や米国政府による国債の増発で、現物の需給が緩んだとみられています。

年金などの資金は、より流動性が高く、少額で取引できる先物に流れており、現物が先物対比で割安な状況となっているのです。

金融当局が警戒しているのは、2019年、2020年にも同じような状況があり、「ベーシス取引」の巻き戻し(手じまい)に伴い、米国債の乱高下と流動性低下を招いた苦い経験があります。

現在も「ベーシス取引」が増加傾向の中、特に高いレバレッジ水準が続いているため、市場のリスク要因として、注視が必要と言えます。

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