日本の金融行政方針と個人の資産形成 Ifa Japan

日本の金融行政方針と個人の資産形成

こんにちは!
さて先般、金融庁から「2022事務年度 金融行政方針」が発表されました。
今年の行政方針のタイトルは、「直面する課題を克服し、持続的な成長を支える金融システムの構築へ」としています。

その中でも、私たちの生活に直結する課題として、「国民の安定的な資産形成の促進」について述べられています。
これから日本国民が真剣に取り組まなければならない個人の「資産形成」にも関連した内容なので、今回は、その一部を要約してお伝えしたいと思います。

  1. 貯蓄から投資へ

ご存知のように、日本の家計⾦融資産約 2,000兆円のうち、現預⾦の割合はいまだ50%を超えています。これは、欧米に比べ、リスク商品の保有比率が、はるかに低い水準です。そんな中、歴代の日本政府は、「貯蓄から投資へ」を目標として掲げてきましたが、この20年間、ほとんど変化は見られませんでした。

そんな中、今回、大幅な見直しが検討されているのが、「少額投資非課税制度(NISA)」です。
現在、NISAは2024年から、新しい制度への変更が予定されていますが、その内容は非常にわかりづらいものとなっています。そこで、英国の非課税投資制度「ISA」や米国の「529プラン」を参考に、恒久化する制度の策定に取り組むとしています。

NISAの総買い付け額は、年々伸びており、22年3月末では27兆円にまでなっています。

ここで、従来のNISA制度を拡大し、より分かりやすく恒久化することは非常に好ましいことではないかと、個人的にも考えています。

日本は、少子高齢化が進み、個人のライフスタイルが多様化する中にあって、NISAが若年層から高齢者にいたる幅広い年齢層の方にとって、使い勝手が良い制度になることを期待したいと思います。

  1. 金融リテラシーの向上

使いやすい制度と共に、日本における課題の一つが、「投資家教育」、「金融リテラシーの向上」です。

現在、金融教育は、学習指導要領を改訂し、中学・高校の授業に盛り込まれるようになりましたが、実際に「資産形成」に取り組み始める大学生や社会人向けの体系的な教育は、民間企業に任せたままとなっています。

私も、コロナ前までは、毎年夏に、国立高知大学で、「FP概論」の授業を行っていましたが、当時、国立大学で、この手の授業を採用していたのは、高知大学だけでした。
また、社会人向けの金融教育は、主に金融機関が様々なセミナーなどを開催はしていますが、その背景には、金融機関の扱っている金融商品の「販売目的」といったものが少なくありません。

その意味においては、金融商品を扱わない、純粋な「資産形成」の教育をする組織が必要と言えます。国としても是非取り組んでもらいたいところですが、まずは民間レベルでは、金融商品の扱いをしていないFPや投資助言会社などが、担うべき部分ではないかと考えています。

  1. 顧客本位の業務運営

最後に、金融機関サイドに求められているのが、「顧客本位の業務運営」です。顧客のライフプランやリスク許容度に応じて、適切なアドバイスを行うことを求めています。
金融庁は、米国が企業年金などの受給者保護を規定した「エリサ法」などを参考に、「受託者責任」を浸透させようとしてきました。
ただ、実際には、金融商品をめぐる様々なトラブルやクレームは、減っていないのが現状です。直近では、以前ご紹介した「仕組み債」などが問題となっています。
やはり、金融商品を販売している立場と、顧客のための助言(アドバイス)の間には、「利益相反」が生まれやすいことが最大の要因と考えられます。

その意味においても、これからは全国民が資産形成に取り組む必要がある中、しっかりと「資産形成のアドバイス(投資助言)」に特化した役割が求められていると考えています。

現在、私も多くのFPの方たちに対して、「資産形成アドバイス業務」の重要性について、研修でお話しをしています。興味を持たれるFPの方が多い反面、投資助言業のライセンスを取得するには、人的要件や営業保証金など、まだまだ“バー”が高いため、なかなか踏み込めない方が多いのが実情です。

今後は、助言範囲を「投資信託」に限定するなどしたライセンスを作り、よりFPの方たちが、この分野に参入しやすくすることも、重要ではないかと考えています。

以上、今回は、岸田総理が提唱する「資産所得倍増プラン」を視野に入れた金融庁の行政方針を取り上げてみました。

なお今回、金融庁は、金融行政方針の中で、「海外資産運用業者等に対する直接の働きかけの強化」にも言及しています。
今後は、海外の資産運用業者の日本への進出や業務拡大に向けたニーズ・課題を幅広く把握し、取組んでいくともしています。
日本国内においても、世界標準の様々なファンドが購入できるようになることにも、期待したいと思います。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール